ホエイ(牛乳)とソイ(大豆)プロテインを比較して考えてみる
プロテインと一口に言ってもいくつか種類があります。大きくは動物性と植物性に分けられ、動物性では牛乳を原料としたカゼイン/ホエイプロテイン、植物性では大豆を原料としたソイプロテインやエンドウマメを原料としたピープロテイン、玄米由来のライスプロテインまであります。(他にもありますが割愛)
しかしながら、流通量を鑑みればプロテインはホエイとソイ(大豆)がほとんどですので、2大プロテインはホエイとソイプロテインであると言って良いでしょう。(これにカゼインが続く形でしょうか)
そこで本記事では、ホエイプロテインとソイプロテインに絞って考えていきたいと思います。
ホエイプロテイン
牛乳を原材料としたプロテインです。大きく分けるとWPC(whey Protein Concentrate)、WPI(Whey Protein Isolate)、WPH(Whey Protein Hydrolysate)の三種類になります。
WPHは酵素の力によりアミノ酸のつながりがより細かくなるよう加工したものです。そのため消化吸収性が高いのが特徴ですが、比較的高価となり流通量もあまり多くはありません。
そこでここではさらに絞り込んで、店頭でも見かける機会の多いWPC、WPIに絞ってご説明したいと思います。
まず、WPCとWPIの主な違いですが、それはタンパク含有量と乳糖の有無、そして消化吸収速度にあります。
WPC (Whey Protein Concentrate)
牛乳をカゼイン(リンタンパク質)とカード(凝乳。ヨーグルト)に分離して、そのカードの水分を精製して作ったものがWPCです。ヨーグルトの蓋をとったときに見える上澄み液を精製したものと考えればわかりやすいでしょう。
- タンパク含有量:約80%
- 乳糖:含まれる
- 消化吸収速度:ソイより速いがWPIには劣る
WPI (Whey Protein Isolate)
WPCに含まれる乳糖、乳脂、灰分などを取り除いてタンパク含有量を高めたものがWPIです。牛乳を飲んでお腹を壊してしまうような乳糖不耐症の方はこちらのWPIのを選んだ方が無難です。消化吸収速度はWPCよりも早く、価格は少し高くなります。
- タンパク含有量:約90%
- 乳糖:含まれない
- 消化吸収速度:WPCより速い
ホエイプロテインのメリット
- 筋肉同化作用(アナボリック):BCAA(バリン、ロイシン、イソロイシンという3種の分岐鎖アミノ酸)の含有量が高く、タンパク合成シグナルを(特にロイシンによって)刺激する。さらにロイシンはタンパク質のリサイクル屋(オートフファゴソームやプロテアソーム)の働きを阻害するため筋分解の抑制にも寄与する。
- 免疫力が高まる:システインが多く含まれており、グルタチオンと呼ばれる抗酸化物質の材料になる。また、グルタチオンがマクロファージなどの免疫細胞に十分に存在する事で免疫力が上がる事が報告されている。
- 解毒力が高まる:体内にはメタロチオネインと呼ばれるシステイン由来のチオール(SH)基を豊富に含んだ金属タンパク質が存在しており、これが重金属を補捉することで体外に排出する。ホエイプロテインにはシステインが豊富に含まれていることから、メタロチオネインへのチオール基の優れた供給源となり得る。
- ダイエットに効果的:摂食亢進作用のあるグレリンの分泌を抑え、摂食抑制作用のあるCCK、PPY、GLP-1の分泌を高める作用が報告されている。(グレリン、CCY、PPY、GLP-1についてはJ-Stageサイト内のこちらを参照ください)
ホエイプロテインのデメリット
- 乳糖不耐症の人は、WPCに含まれる乳糖によってお腹を壊してしまうおそれがある。しかしWPIであれば問題ない。
- アルギニン(成長ホルモンの分泌やコラーゲン生成に関与)の含有量が大豆プロテインと比べて少ない。
ソイ(大豆)プロテイン
その名のとおり、大豆を原料としたプロテインです。「畑のお肉」と呼ばれるくらいですから大豆には豊富なタンパク質が含まれています。ただし、最近はソイプロテインの問題点(イソフラボン含有量など)も指摘されていますので、その点は留意する必要があるでしょう。
SPC (Soy Protein Concentrate)
大豆油を取り除いた「脱脂大豆」から水溶性の非タンパク部分を取り除いて作られたものがSPCです。水を使ってSPCを抽出する方法とアルコールを使う方法があります。イソフラボンの含有量は抽出方法により違いがあります。
- タンパク含有量:約70%
- イソフラボン含有量:高い
※ ただし、アルコール処理であれば低くなる(100g中12mg程度)
SPI (Soy Protein Isolate)
SPCから炭水化物をさらに取り除いたものがSPIです。一般にソイプロテインとして販売されているのはこちらのSPIになります。
- タンパク含有量:約90%
- イソフラボン含有量:低い
※ ただし、イソフラボンが多く含まれるような製造方法のメーカーあり
ソイプロテインのメリット
- 筋肉同化作用(アナボリック):アルギニン含有量が高く、BCAAも含まれている。ただし、BCAA含有量は相対的にホエイより低い。
- 心臓血管系疾患への効果が期待できる:大豆に含まれるサポニンには、悪玉コレステロール(LDL)を下げ、善玉コレステロール(HDL)を上げる作用がある。米国食品医薬品庁(FDA)では、大豆タンパクが冠状動脈疾患のリスクを減らすということで、1999年に健康強調表示(Health Claim)を認めた。
- ダイエットに効果的:マウスでの実験においては、大豆タンパク摂取群のほうがカゼイン摂取群よりも血中アディポネクチンが増加したとの報告があり、これによりAMPK(エネルギーセンサー)が活性化されることで体脂肪が減少したとのこと。
ソイプロテインのデメリット
- ホエイプロテインと比べ消化吸収に時間がかかる。筋トレ前後の使用には若干不利と思われる。
- 大豆のプロテインスコアは56(アミノ酸スコアは86)であり、必須アミノ酸のひとつであるメチオニンの含有量が足りていない。ほとんどのソイプロテインはメチオニンを添加してプロテインスコアが100に近くなるよう調整しているが、念のため購入時には成分表示等に気を配る必要がある。
- イソフラボンには女性ホルモン(エストロゲン)に似た作用があり、女性化作用が問題となる可能性がある。(言い換えると女性には適したプロテインとも考えられますが、そこは下囲みを参照してご判断されることをおすすめします)
- その他、トリプシンインヒビター(タンパク質の消化阻害)、ゴイトロゲン(ヨウ素の吸収阻害)、フィチン酸(キレート作用によるミネラルの排出)などの影響も考えられるが、ソイプロテインの製造工程、日本人の食習慣等を鑑みればそれほど気にする必要はないと言える。
※ ここまでの内容は、主に「アスリートのための最新栄養学(上) 山本義徳 著」にかかれている内容を、私なりに解釈し、そしてネット関連情報を紐付けして書いております。さらなる知識の習得をお考えの方は、山本氏の著書をご一読ください。
[まとめ] ホエイとソイの比較
ホエイのデメリットはアルギニンが少ない事、そしてソイプロテインにこれを補ってくれる効果があるとすれば、単純に考えてホエイとソイをミックスして飲むのが良さそうです。しかし、自分で配合するのは若干面倒な気がします。そのような方向けにソイとホエイのミックスプロテインを事項にご紹介しておりますので参照ください。
とはいえ、アルギニンはサプリメントとして別途摂取したほうが、摂取量のコントロールや飲むタイミングなど色々応用が利いて好都合です。結局はホエイプロテインにアルギニンを追加摂取するのがベストな選択だと思われます。
また、プロテイン(ならびに他のサプリメント)をまだ飲んだ事がない方にとっては、食事以外に何か栄養を摂取するという行為自体に抵抗があるかもしれません。そのような方は一度ご自身の一日あたりのタンパク質摂取量を計算してみてください。おそらく、体重1kgあたり1gの摂取量には足りていないと思います。
もし足りていなかったら、ここは素直にタンパク質の補給源としてプロテインを検討すべきではないでしょうか。筋トレを考慮するのであればアルギニンも検討すべきですが、健康目的の場合はソイかホエイのどちらか一本勝負ではじめるのも悪くはありません。とはいえ、ビーガンやアレルギーなど特別な事情がない限り、ホエイプロテインを第一候補として問題ないでしょう。
ホエイ・ソイミックスプロテイン リンク
もっと調べればこれら以外にもあると思いますが、思いの外見つかりませんでした。
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