新コーナー「ゴルフメカ談議」オープン!

謎の一般ゴルフ研究家(通称パンゴル)が、ゴルフメカニクス/メカニズムについて会話形式でお送りする、ゴルフエンターテイメントです。

ゴルフメカ談議へGO!

競技力向上を目指すなら “ストレングス & コンディショニング” の基礎から学ぶべし!

ゴルフ筋トレ

“ストレングス & コンディショニング” (以下、S&C)をご存じでしょうか。

筋力やパワー、持久力のみならず、スピードやバランス、柔軟性等も加味した身体能力の向上を目指すことはもちろんのこと、骨格や筋肉のしくみ、食事や休息のあり方などを含めた形で、総合的に身体づくりにアプローチする、いわばアスリート向けのトレーニングシステムです。

 

巷には、多種多様さまざまなトレーニング情報が溢れかえっています。

よほどの知識や経験があれば、それらをベースに自分なりの理論やメソッドを構築することも可能だと思いますが、そもそも、競技によって目指すべき体型や身につけるべき能力は違いますので、一般論が通用しない局面に出くわすことがあることも、十分予測できます。

情報が多いことは喜ばしいこと。

しかしその反面、情報の取捨選択の機会も同様に多くなりますので注意が必要です。

自己流は全く否定しませんが(というより、私は自己流大好き派)、最終的には取捨選択の判断基準さえままならないという状況に陥るのが関の山、そうなるのが現状ではないでしょうか。

 

ですので、突き詰めていけば、プロトレーナーに体づくりを依頼するのが最短ルートと言って間違いないわけですが、ちょっとその前に、最終的にプロに依頼する方も、自己流を貫き通そうと思っている方も、この体系化されたS&C入門書でトレーニングの基礎的知識を習得しておきませんか?

 

自分である程度の知識を納得しておき、内発的に「やる」という動機づけにまで至ることができれば、トレーニング効果も上がるはずです。

やらされるのは嫌なもの。これは今も昔も変わりません。

部活動経験者なら、終わりの見えないダッシュだったり、しごき的な指導だったり、今思えば全くもって非科学的な条件下で「やらされた」ことを多くの方が経験していると思います。

こんな心理状態では、競技力が向上するわけがありません。

広く浅くトレーニングの基礎理論が学べるS&Cの入門書

全米ストレングス・アンド・コンディショニング協会(National Strength and Conditioning Association: NSCA)の日本支部であるNSCAジャパンが発行したこちらの本。これが、今回のお話のベースとなります。

 

発刊が2003年と古いにもかかわらず、内容は全く色褪せてはいません。

もちろん、近年明らかにされてきた新事実に書き換えられるべき内容もあるとは思いますが、基礎知識を体系的に習得するには最高に適した本だと思われます。

ぱらぱらとページをめくれば、図やグラフ、表が目に飛び込んでくるため、とっつきにくさを感じるかもしれませんが、実のところ難しい物理公式など全く出てきませんので、安心してお読みいただける本となっています。

 

なんでもこの本は、本来S&Cトレーナーを目指す人用に書かれた700ページにもおよぶ内容の本を、200ページ程度に編集しなおしたものだそうです。

そのため、トピックごとの内容は、決して深いものではありませんが、だからと言って浅すぎてもいないところが素晴らしい。

競技者向けの情報が満載

筋トレ系Youtuberの皆様のおかげで、筋トレテクニックの情報収集が、以前と比べて格段に容易となりました。

私もよく参考にさせていただいているのですが、それはあくまでもボディメイクのため。

競技力向上を目的とした動画の絶対数は、極めて少ないと言って良いのではないでしょうか。

 

「使える筋肉、使えない筋肉」論争が度々巻き起こりますが、私は「使えない筋肉」など存在しないと考える派です。

しかし、使い方が悪ければ、もしくは身についていなければ、結果的に使えるものも使えなくなってしまうのが当然の帰結ではないでしょうか。(いわゆる、宝の持ち腐れですね)

 

そのためには、自分がやっている競技が瞬発系寄りなのか、持久系寄りなのか、そういうところから正しく理解しておかなければなりません。

 

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念のために言っておきますと、力とパワーは明確に区別されています。

「力」は皆さんがご想像される通りでまず問題ないとして、「パワー」の定義がちょっとだけややこしいのです。

パワーとは、単位時間当たりの仕事量のことを意味します。

仕事の量を時間で割るのですから、つまり、「仕事率」と表現できます。

 

簡単な例で言えば、100kgの箱を押して動かそうとしたとき、Aさんは1mくらい動かせたけど、Bさんは押しても押しても全く動かすことができなかったとします。

このとき、Aさんは箱を動かした事実がありますので、「パワー」を発揮したと言えます

これは、なんとなくわかりますね。

しかし、Bさんは箱を全く動かせていないわけですから、「力」は使ったとしても「パワー」は発揮できなかったことになってしまうのです。

 

もっと言えば、いくら頑張って家の壁を押してたとしても、(相当なボロ家でない限り)家は全く動きません。

このようなとき、「パワーの無駄遣いをした」と表現する人がいるかもしれませんが、本当のところは「力の無駄遣い」をしたことになるわけです。

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ゴルフは高強度・瞬発系よりの競技だった

ゴルフってなんだか歳を取ってからでもできる、のんびりしたスポーツだという印象がありますが、実際にはそうとも言い切れないようです。

 

 

上図は、エネルギー供給機構への依存度を表にまとめたもの。

つまり、ゴルフスイングを行うためのエネルギーが、どのように供給されているかを知ることができます。(ラウンド中の歩きに対するエネルギー供給は加味されていないと思われます)

 

ATP-PCr系の代謝経路を既にご存じの方は、上図を見ただけである程度ご理解いただけると思いますが、初めて聞いた方のために、本書より当該箇所の説明文を引用させてもらいましょう。

無酸素性エネルギー供給経路でも、最大筋力に近いレジスタンストレーニングや50m最大スピードスプリントなどのように、非常に運動強度が高く、5~10秒の短い時間で疲労困憊にいたるようなエクササイズでは、フォスファゲン系(ATP-PCr系)の供給経路がメインのエネルギー源となる。これに対して、比較的軽い負荷によるレジスタンストレーニングや400-800mスプリントなど、30~120秒で疲労困憊にいたるエクササイズでは、速い解糖系(乳酸系)のエネルギー供給経路がメインとなる。

 

ATPとは別名エネルギー通貨。体を動かすエネルギーの実態です。

ごはんを食べて、糖質や脂質を摂取しても、それがそのままエネルギーとして使われるわけではありません。

糖質や脂質を原料としてATP(アデノシン三リン酸)を生み出し、そのATPから放出されるエネルギーを使って、人間は活動しているのです。

ただ、ATPは体内での貯蔵が難しい。

ですので人間は、ATPそのものを貯蔵するのではなく、グリコーゲンや脂肪を体に蓄えるようにしています。

 

次に、ATP-PCr系ですが、PCrとはクレアチンリン酸のこと。

ATPからエネルギーが放出されると、ATPはADPという物質に変換されますが、クレアチンリン酸は、このADPをATPに戻すことができるのです。

こういった相互作用を含めて考えたときのエネルギー供給経路を、ATP-PCr系と言います。

 

量は少ないですが、ATPは常に体の中に存在していますから、何か急にエネルギーが必要になったときは、既存のATPが瞬時に反応して、筋活動に用いられます。

当然ながら、グリコーゲンによる解糖系の反応が始まる前に起こるわけです。

人間の体の中で最も早い反応が、このATP-PCr系だとお考え下さい。

 

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ということで、少々説明が長くなりましたが、ATP-PCr (%) を見れば、ゴルフスイングとはどういう種類の運動なのかというのが見えてきます。

上図をチェックすると、ATP-PCr (%) の値が “95” となっております。

上の囲み文章では、「5~10秒の短い時間で疲労困憊にいたるようなエクササイズ」とありますが、ゴルフスイングはどう考えても、これには当たりません。

しかしながら、数字だけ見れば、究極の無酸素運動であり、高強度な運動であると言えます。

 

一回スイングしただけで、疲労困憊になることは絶対にありませんが、自分が思っているより高強度であり、瞬発系の種目であると自覚しておく心構えは必要でしょう。

ゴルファーには腰痛や手首のケガがつきものですが、もしかするとその原因は、実際の運動強度とプレイヤーがゴルフに抱く運動強度へのイメージとの間に、ギャップがあるからなのかもしれません。

 

余談ですが、PCr(クレアチンリン酸)の元となるクレアチンは、サプリメントとして補給できます。

粉末状のクレアチンを購入し、スポーツドリンクなどに混ぜて溶かしておけば、ラウンド後半における飛距離ダウンなどを防げる可能性もありますので、御一考ください。

個人的には、ラウンド中に飲むドリンクは、EAAなどの必須アミノ酸にクレアチンを混ぜたワークアウトドリンクが最高だと思いますが。

あわせて読んで最適化する

今回ご紹介してるS&Cの入門書は、2冊で1セットです。

理論編とエクササイズ編に分かれており、当然ながら、トレーニング方法なども丁寧に紹介されています。

瞬発系のトレーニングも充実していますので、ご参考にされると良いかと思います。

 

ただ、本書はやはり入門書的な位置づけですから、競技特異的なトレーニング内容には言及されていません。

そこまで望むのであれば、専門家に頼むのが一番ですが、私のように自己流を貫き通したい方は、他の本を参考に、自分なりのメニューを考えてみるのが良いかと思われます。

 

そこでお勧めしたいのがこちらの本。

思いの外よくできた内容の本でしたので、ここでご紹介させていただきます。

訳本ですから、正直読みづらさは感じますが、そこはご愛嬌と言うことで。

尚、この本を読んだ感想も別記事にまとめています。ご興味があれば、ご参考ください。

【GiS的多読】ゴルフ解剖学:クレイグ・デイビース / ヴィンス・ディサイア
本書は、トレーニングを通じてのゴルフパフォーマンスの向上と障害リスクの低減を目的としている。ゴルフは裕福なシニア世代のための楽なスポーツであると思われがちだが、実際には、ゴルフスイングで生み出される力は、脊柱を体重の8倍もの大きさで圧迫するほどであり、必ずしも安全で楽なスポーツだとは言えないのだ。また、解剖学的にゴルフスイングを理解しなければ、スコアアップもあり得ないだろう。その証拠に、ここ30年間で道具が進化したにもかかわらず、アマチュアのハンディキャップは変わらないではないか。理由は明白。体の機能が、道具の進化について行けていないのである。

最後に

これまで、トレーニングに関する本を結構読んできましたが、どうしても情報の統一性を保つのが難しいと感じていました。

あるトピックに特化している本を読んで、それをつなげていくってのは、本当に骨の折れる作業で、体系的に基礎知識を学んでいない自分のような人間にはハードルが高すぎます。

ゴルフレッスン書を何冊読んだとしても、どれが本当かわからなくなるだけ、みんな勝手なこといってんなあ、みたいな感じでしょうか。

 

しかし、この本を読めば、そんな悩みも一発で解消できることでしょう。

 

今から本格的にトレーニングを始めようと考えている人はある意味ラッキーです。

この本を読んでおけば、偽情報に惑わされることが減りますから。

既にトレーニングを始めている、もしくはトレーナーをつけている人もラッキーです。

トレーナーとの意思疎通がより円滑になるに違いありません。

 

兎にも角にも、基本が大切ってことで。