新コーナー「ゴルフメカ談議」オープン!

謎の一般ゴルフ研究家(通称パンゴル)が、ゴルフメカニクス/メカニズムについて会話形式でお送りする、ゴルフエンターテイメントです。

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【終】なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか? ~ コンテクスチュアルトレーニングより ~

ゴルフ筋トレ

前回の記事(以下のリンクを参照)で、スポーツにおける人間の動作はかなり複雑であるため、従来の還元主義的トレーニングでは限界がある。

そのため、総合的・全体的アプローチによって組織されるコンテクスチュアルトレーニングの必要性が求められる、ということをお伝えしました。

【始】なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか? ~ コンテクスチュアルトレーニングより ~
効果を感じられないトレーニングはつらいもの、苦痛でしかありません。”トレーニングしたからといって、すぐに効果が現れるわけではない” そう認識していても、やっぱり結果が出るまでは不安でたまらないのですから、ストレスは溜まっていく一方でしょう。しかも、筋肉が付いたとしても、それがスポーツパフォーマンスに直結するとは限りませんから、例えば、ゴルフで言えば、筋肉がついたことで逆にスイングが崩れてしまった、なんてことも起こる可能性があるわけです。「なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか?」この問題を避けて通るわけにはいきません。

 

これは要するに、スポーツ動作は一般的に思われているよりとても複雑なのだから、単にウェイトトレーニングによってフィジカルを強化しても、競技力の向上には即つながらないだろう、ということを意味しています。

今回はその理由を、もう少し掘り下げて考えていくことにしましょう。

 

※ 本記事の内容は、フラン・ボッシュ著「コンテクスチュアルトレーニング」に基づいています。

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ストレングストレーニングの競技動作への転移

ストレングストレーニングを一生懸命にがんばっても、それが競技動作に転移されなければ意味がありません。

転移が起こることよる本当の意味でのフィジカル強化がなされれば、筋力発揮の効率化が図れるでしょうし、新しい動作パターンの習得も可能になりますから、パフォーマンスならびにスポーツ技術の向上に結びつくはずです。

しかしながら、この転移がなかなか起こらないことも事実。その原因のひとつに、ストレングストレーニングにおける感覚的要素の欠如があげられています。

 

以下、コンテクスチュアルトレーニングより抜粋。

けがをしてもランニングと関係する動作を続けようとしているランナーにとってアクアジョギングが有効であるかは、かなり疑問が残るところである。

実際のランニングと可動域は近いが、感覚的な衝撃(重力や水の抵抗の入力)を類似性があるものとして認識することが難しいため(最も大切な運動特性である弾性的な筋の利用が欠けている)、転移はかなり限られている。

 

要は、「ストレングストレーニングを行ったとする事実をもって満足してはいけない。パフォーマンスの向上には感覚的要素も影響するのだから、そういった意味で、もっと統合的・全体的アップローチが重要である」と、フラン・ボッシュ氏はおっしゃているのです。

つまり、ストレングストレーニングと感覚運動とのリンクが重要。それが達成されれば転移が起こりやすくなるということです。

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全習的練習と分習的練習

感覚運動とのリンクを図るには、全習的練習法(全習法)を取り入れるべきだと、ボッシュ氏は語っています。

全習法とは、「全体像とスポーツ動作の意図をできるだけ完全に残して、スポーツ動作をシンプルにしたバージョンを使う(時に高度にシンプルにする)」ことを意味し、一方、分習的練習法(分習法)は、「全体の中の部分もしくはいくつかの部分だけ実践する方法」です。

分習法だと、感覚的な部分が実際のスポーツ動作とかけ離れている場合が多いため、転移が起こりにくく、したがって、当初期待したほどの効果を得ることは非常に困難となってしまいます。

 

ゴルフレッスンでよく見かけるドリルは分習的練習法の代表格。もっと言えば、練習場でフルショットを練習したとしても、それも分習的練習に過ぎません。

もし、練習場でも全習的練習の要素を取り入れたいのであれば、カゴの上に片足を置いてショットしたり、マットのラインを参考にしないショットなど、何らかの工夫が必要となってくるでしょう。

ゴルフの練習はストレングストレーニングではありませんが、練習場シングルを脱却したいのであれば、この全習法的考え方は大いに参考にすべきです。

 

とはいえ、全習法が万能かと言えばそうでもなく、ときには分習法も必要となることでしょう。

つまりは、全習的練習法と分習的練習法のバランスが大切。

分習的練習を最小限にしながらのトレーニングが肝要であると、コンテクスチュアルトレーニングでは述べられています。

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ボディビルディングからの影響

ボディビルディングでは、一つの筋に着目し筋肥大させるといった身体部位別アプローチが取られますが、そこには大きな欠点があるとボッシュ氏は主張しています。

なぜなら、筋群間の協働が図られないし、神経の適応を目的とした複雑系トレーニングとも相容れないからです。

さらに、筋肥大が起こりやすいゾーンで身体部位別トレーニングが行われた場合、コーディネーションが損なわれる可能性があるとも述べています。

 

「筋トレをしたことで、競技パフォーマンスが落ちてしまった」と嘆くプロゴルファーの方をたまに見かけますが、もしかすると、上記のようなことが関係しているのかもしれません。

ただ、もしそれが、2か月や3か月程度の筋トレでそうなったというのであれば、それはまた別の話ではないでしょうか。

というのも、実際問題、3か月そこらでパフォーマンスに大きな影響を与えるほどの筋肥大は考えられませんから。

パワーアップしたせっかくの筋肉を、自分自身が使いこなせていない可能性のほうが高いと個人的には考えています。

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理学療法からの影響

理学療法の基本的な考えに基づけば、安定性に関する力の発揮システムは「小さな筋群による小さな力の発揮から、大きな筋群による大きな力の発揮へ、線形的に遷移する」となりますが、この考え方には疑問が残るとボッシュ氏は言います。

ある運動において突然の相転移が起これば、いきなり異なる筋群による力の発揮が要求されることになりかねないためです。(相転移や力発揮の非線形性については、前回の記事を参照してください。)

 

また、外乱に対する反応時間や経路にも問題がありそうだと指摘しています。

理学療法における低い衝撃に対する体幹制御は、固有受容性のフィードバックを基礎として、反応時間が0.025秒(脊髄)から0.1秒(脳経由)までかかるとされていますが、スポーツ動作の予期せぬ外乱は、直ちに、そして速やかに対処されるべきものであり、そうするとこの想定された時間や経路では説明がつかないのだとか。

例えば、高い速度でのランニングでは、その支持期(接地時間)は短すぎるため、主導筋と拮抗筋の共同収縮が混乱への制御メカニズムとして働くことになります。

共同収縮であれば、反応時間はほぼゼロ(1000分の1秒単位)。

実際には、この共同収縮が、固有受容性フィードバックの欠点を埋め合わせしていることになるのです。

 

少々説明がややこしくなってしまいましたので、この章を簡単にまとめると・・・

「理学療法は、突然の相転移や力発揮の非線形性を考慮していないため不十分」さらに「スポーツ動作における外乱に対してのメカニズムも、理学療法が想定する反応時間や経路には疑義あり」、とボッシュ氏は言っているわけです。

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まとめ

この本「コンテクスチュアルトレーニング」の”第一章”を読むと、一見ストレングストレーニングを否定しているように見えますが、そうではありません。

スポーツ動作、ひいては人間の動作は非常に複雑なシステム(複雑系生命システム)のうえで成り立っているのだから、もしあなたがストレングストレーニングを通じてスポーツパフォーマンスを向上させようと思っているなら、やる前によーく考えてね」と教えてくれているのです。

 

そして、前回の記事も見てくださった方ならば「なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか?」の答えももうお分かりのはず。

トレーニングへのアプローチ方法が間違っている可能性が高いというわけです。(というより、想定が甘いと言ったほうがいいかもしれません)

 

となってくれば、最後に気になるのが、競技パフォーマンスを向上させるための具体的なトレーニング方法です。

しかし、こればっかりは皆さまご自身で「コンテクスチュアルトレーニング」をお読みいただき、ご確認いただくしか方法はありません。

 

多くの様々な分野の研究の知識を取り入れながら、コーディネーション的運動学習パターンとメカニズムによって導かれるコンテクスチュアルなスポーツに特異的なストレングストレーニングの実践的モデルを創造することを試みた。

(「コンテクスチュアルトレーニング」”本書の目的” より引用)

 

ボッシュ氏の考えるストレングストレーニングの実践的モデルとは何なのか。

ここに、競技パフォーマンスを向上させる秘密が隠されているはずです。