新コーナー「ゴルフメカ談議」オープン!

謎の一般ゴルフ研究家(通称パンゴル)が、ゴルフメカニクス/メカニズムについて会話形式でお送りする、ゴルフエンターテイメントです。

ゴルフメカ談議へGO!

【始】なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか? ~ コンテクスチュアルトレーニングより ~

ゴルフ筋トレ

効果を感じられないトレーニングはつらいもの、苦痛でしかありません。

”トレーニングしたからといって、すぐに効果が現れるわけではない” そう認識していても、やっぱり結果が出るまでは不安でたまらないのですから、ストレスは溜まっていく一方でしょう。

しかも、筋肉が付いたとしても、それがスポーツパフォーマンスに直結するとは限りませんから、例えば、ゴルフで言えば、筋肉がついたことで逆にスイングが崩れてしまった、なんてことも起こる可能性があるわけです。

とはいえさすがに、いまどきの米PGAツアーの選手たちを見れば、”筋トレには効果なし” なんて言えるわけもなく、そんな考えを持っていたら、どんどんと差は開いて行く一方で、最終的には世界から取り残されてしまうことになると予想されます。

 

結論、確実に成果を出したければ、経験豊富な信頼できるトレーナーに依頼するのが一番

そして、それと同じくらい大事なのが、”なぜ、トレーニング効果を実感できないような事態が起こってしまうのか” その仕組みをアスリート自身が事前に理解しておくことです。

 

自分の考えにあったトレーナーを見極め、自ら積極的にトレーニングに取り組むことができれば、それが成功への最短ルートとなるはず。

やらされるトレーニングではなく、自らが納得し考えるトレーニングへ!

スポーツパフォーマンスの向上には欠かせない要素であると言って間違いないはずです。

 

※ 本記事の内容は、フラン・ボッシュ著「コンテクスチュアルトレーニング」に基づいています。

スポンサーリンク

コンテクスチュアルトレーニングとは?

コンテクスチュアル(Contextual)は、日本語で「文脈の、文脈のある」と訳されます。

したがって、コンテクスチュアルトレーニングとは、”文脈のあるトレーニング”となるのですが・・・・・・これを聞いても、何のことだかさっぱりわかるはずもありません。

 

そこで、この本におけるコンテクスチュアルの意味について、まずは理解しておきましょう。

コンテクスチュアル:知覚、認知、言語、記憶によって、その前後関係、背景、環境から意味を持つこと

トレーニングに意味を持たせるには、上記のような色々な要素を考慮しなければならず、そうすることで初めて、文脈のある(意味のある)トレーニングが成り立つ、と解すことができました。

 

では続いて、コンテクスチュアルではない ”文脈のないトレーニング” について考えてみます。

”文脈のないトレーニング” とは、つまり、従来型のストレングストレーニングのこと。

これをボッシュ氏は、還元主義的トレーニングと呼んでいます。

還元主義:複雑な物事でも、それを構成する要素に分解し、それらの個別(一部)の要素だけを理解すれば、もとの複雑な物事全体の性質や振る舞いもすべて理解できるはずだと想定する考え方

分かりやすく言えば、”木を見て森を見ず的なトレーニング”ということになるでしょうか。

 

ここまでの話の流れからして当たり前ですが、フラン・ボッシュ氏は還元主義的トレーニングには否定的な態度を取っています。

結局彼は、トレーニングの在り方をどう導いて行きたいのか。その答えが、本書の帯にありました。

スポーツパフォーマンスを
様々な要素に分類して考える還元主義的アプローチから
統合的・全体的アプローチへ

このことから、コンテクスチュアルトレーニングとは、統合的・全体的アプローチ型のトレーニングを意味することがわかりました。

スポンサーリンク

人間の動作は “複雑系生命システム” の上で成り立っている

“複雑系生命システム”・・・またまたややこしい言葉が出てきました。

とはいえ、この概念はいたって簡単。

単に、“人間の動作というものは、複雑な事柄が絡み合って成り立っているのですよ” と言ってるだけです。

しかし、ややこしいのは、ここで言う”複雑な事柄”が意味するところです。

いったい何を指しているのかと言うと、本書によれば「ノイズ」「相転移」「筋力発揮の非線形性」「自己組織的な働き」(など)に分類されるとのことでした。

ノイズ

ボッシュ氏の考えるノイズは多種多様ですが、ときにスポーツパフォーマンスに多大な影響を与える可能性のある比較的影響度が小さいと考えられる因子(パラメータ)のことを、ノイズと定義しています。

ですのでそれは、ゴルフで例えると、左手の小指の筋力のことかもしれませんし、両足の親指を動かす筋力のことかもしれません。

もっと言えば、そもそもがコンテクスチュアルの定義には、知覚、認知、言語、記憶、そして背景や環境なども含まれるわけですから、筋肉の働きに限定して考えること自体がナンセンスであり、もっと広い視野で競技全体にかかわる様々な要因が考慮されなければならない、と解することができます。

 

ゴルフで言えば、雨や風などの天候、そして芝の品種の違いなど、これらが代表的な環境依存のノイズだと考えて良いでしょう。

雨が降ればボールは滑りやすくなり、レインウェアによって関節の可動域が制限されます。

また、芝の品種が違えばボールのライが変わるわけですから、知覚、認知機能をフル回転させ、最適なスイングイメージを再構築して対応する必要がでてきます。

 

そんなノイズですが、環境依存のノイズように、あらかじめ影響を予測できるようなものであれば、ある程度余裕をもって対処することもできますが、ある条件を境にいきなり影響度が増大するような場合、このようなときは注意が必要です。

そこで、下の図をご覧ください。

縦軸に、a, b, c, d 4つのパラメータが並んでおり、dは他の3つと比較すると非常に小さなパラメータ、いわゆるノイズです。

横軸は明確に定義されていませんが、運動強度だったり、時間だったり、そういったものでしょう。

左の図では全てが一定ですが、右の図になると、ある地点からdの影響が最も大きくなっていることがわかります。

これにより、これまで無視できていたノイズ的因子が、パフォーマンスに多大な影響を与えるほど、大きくなることがあると理解できるわけです。

スポンサーリンク

相転移と筋力発揮の非線形性

まずは「相」の概念を理解しないといけません。水の相転移が最もわかりやすいでしょう。

「固相 ⇔ 液相 ⇔ 気相」

ここまでは大丈夫ですね。

 

同様に、人間の動作で考えてみます。

誰もが日常的に行っている歩行と走行の動作。これらは「歩行相」と「走行相」という別の相であると言えるわけですが、このとき、高さ方向の重心位置に注目してみるとその違いが明確になります。

  • 歩行相:(歩く人を横から見て)両足が重なるときが、最も重心位置が高くなる
  • 走行相:(走る人を横から見て)両足が地面についていないときが、最も重心位置が高くなる

つまり水の場合と同様、歩行と走行では相が異なることが分かります。

 

ここまでの説明で、相転移については何となくご理解いただけたと思います。

しかし、ボッシュ氏がここで着目するのは、単に相転移が起こるという事実に対してではなく、いきなり起こる相転移についてです

こいつが、ノイズ同様、パフォーマンス向上を考えるにあたって、無視できない存在となるわけです。

 

スポンサーリンク

 

この「いきなり起こる相転移」を理解するのに都合がいいのが、鬼ごっこです。

 

あなたは今、鬼に見つからないよう隠れながらゆっくり歩いています。

すると物陰から鬼がいきなり現れた。

当然ダッシュして逃げることになります。

 

このとき、歩行から走行へいきなりの相転移が起こりました。

そしてそこには、歩行と走行の間に競歩のような中間の相が存在していなかった事実があるわけです。

これが、「いきなり起こる相転移」の意味するところになります。

 

また重要なのが、相転移がいきなり起こるのであれば、筋力発揮のレベルもいきなり大きくなるという事実です。

つまり、筋力の発揮レベルは徐々に大きくなるのではなく、いきなりドンと大きくなるのであって、非線形的な挙動を示す、これが、筋力発揮の非線形性です。

スポンサーリンク

自己組織的制御の働き

「自己組織的制御」とはなんだか難しい言葉ですが、その本質は皆さん普段の生活で起こっていることそのものだと言うことができます。

例えば、歩行から走行に切り替える際、足の運びや腕の振り幅など特別に意識することなどないはずです。

つまり、脳ミソで考えていちいち体の動かし方を制御しなくても、勝手に体が反応して動いてくれるような制御。これを「自己組織的制御」と呼んでいるわけです。

 

しかしながら、運動が勝手に制御されるとはいえ、それがいつも良い結果に繋がるとは限りません。

ゴルフで言えば、ダウンスイングの途中でダフりそうだと体が察知したとき、インパクトで勝手に体が伸びあがってしまう現象が起こることがあります。

これこそまさに、「自己組織的制御」が働いた証拠。

うまくミートできればラッキーですが、とはいえ、伸びあがり動作の本質は、トップボールに繋がる動作でもあるわけで、喜んでばかりもいられないのです。

このような「自己組織的制御」にばかり頼っていたのでは、安定したボールを打ち続けることなどできようもありません。

スポンサーリンク

まとめ

切りが良いので、今回はここまで。

本記事では「なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか?」の結論に至ることはできませんでしたが、この問題を考える上での基本的な知識は習得できたといって良いでしょう。

 

  • 統合的・全体的なアプローチがスポーツパフォーマンスを向上させる
  • 還元主義的アプローチの問題は、複雑系生命システムに言及していないことにある
  • 複雑系生命システムを複雑化させている代表的な要素としては「ノイズ」「相転移」「筋力発揮の非線形性」「自己組織的な働き」があげられる

 

まとめると上記のようになりますが、平たく言えば、「スポーツパフォーマンスを向上させたければ、色々な要素を考慮する必要がある」ということですね。

それでは、次回も引き続き、「なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか?」を考えていきたいと思いますので、よろしければお付き合いください。

<続きはこちら>

【終】なぜ、あなたはトレーニング効果を実感できないのか? ~ コンテクスチュアルトレーニングより ~
前回の記事(以下のリンクを参照)で、スポーツにおける人間の動作はかなり複雑であるため、従来の還元主義的トレーニングでは限界がある。そのため、総合的・全体的アプローチによって組織されるコンテクスチュアルトレーニングの必要性が求められる、ということをお伝えしました。これは要するに、スポーツ動作は一般的に思われているよりとても複雑なのだから、単にウェイトトレーニングによってフィジカルを強化しても、競技力の向上には即つながらないだろう、ということを意味しています。