いやー、驚きましたね。2020年、PGAツアー再開後のデシャンボーの肉体と飛距離には驚きましたね。
鍛え上げられた肉体から放たれた打球は、しばしば400ヤードオーバー。この圧倒的な飛距離をもって、2020年Rocket Mortgage Classic そして US Open を制しました。
2020年 Tour Championship までのドライビングディスタンスは平均322.1ヤードで第一位。そして、2021年シーズンに入ってからのドライビングディスタンスは337.8ヤードと、とどまる所をしりません。
2019年シーズンのドライビングディスタンスは302.5ヤード(34位)でしたから、つまるところ本記事執筆時の2021年1月1日までに、35.3ヤードも平均飛距離を伸ばしたことになります。
デシャンボーの飛ばしの秘訣とは?
ということで今回は、スイング面と体力(筋力)面からデシャンボーのスイングを分析し、考察していきたいと思います。
スイングからの考察
技術と体力(筋力)は、お互いに補完しあう関係です。
いくら技術が高くても、体力が追いついていなければ結果に繋がりませんし、またその逆も然りで、体力ばかりが先行していても、技術が伴わなければ結果には繋がらないでしょう。
勝つためには、技術と体力の両方を伸ばしていく必要があるわけです。
と考えると、2019年までのデシャンボーには体力が足りなかったのか?
彼のスイングはある種独特なものですから、もしかするとそのスイングは「人並み以上の筋力を必要としていた」のかもしれませんね。
デシャンボー式は、大きな回転半径が鍵
デシャンボーの頭の中には、次の公式があるはずです。
ヘッドスピード = 角速度 x 距離
要は、回転速度(角速度)が一定であれば、距離が長くなるほどヘッドスピードは速くなるという理屈です。もちろん、距離が一定のときは、角速度を速くすることでヘッドスピードを上げることができるということにもなります。
前者についてはデシャンボーのアドレスを思い出してください。
腕とクラブがほぼ一直線の変則的アドレス。これは、距離(ボールまでの距離)を最大限にしようと工夫した結果でしょう。
しかしながら、2019年までは思ったほど飛距離が出なかった。そこで、後者の理屈で、角速度を上げるべく筋力アップに臨んだのかもしれません。
おそらくデシャンボーのことですから、自分のスイングについては絶対的な自信を持っているはずです。
そこで彼は考えた。何が足りないのかと。
さすれば答えは一つ。体の回転速度を上げるべく、筋トレに励もうと。
デシャンボーの頭の中を覗くと、こんな感じでしょうか。
デシャンボー式で、クラブの操作性が良くなる?!
この問題は、実際にクラブを持ってクルクルと回してみるとわかりやすいとおもいます。
左腕を地面と平行に伸ばし、デシャンボーのように腕とシャフトを一直線にして持った時と、オーソドックスな160度程度の角度をつけて持った時のクラブの回転のしやすさを比較してみましょう。
左腕を軸として回してみると、以下のように感じるはずです。
- デシャンボー式:クルクルと簡単にヘッドが回る
- オーソドックス式:かなりヘッドが重く感じる
デシャンボー式のほうが操作性に長けているように思われますが、どうでしょうか。
しかしながら、この事実を言い換えると、デシャンボー式はセンシティブ過ぎるとも言えるわけです。
ここで、デシャンボーのフェアウェイキープ率を見てみましょう。私の予想では「ヘッド操作性の感度が良すぎて、逆に大した結果を残せていないのではないか」です。
2020年のデシャンボーのDriving Accuracy Percentage(フェアウェイキープ率)は、140位の57.37%。
キャメロン・チャンプが154位の56.36%、マキロイが155位の56.34%、我らが松山英樹が149位の56.98%・・・あれれっ、、、私のシナリオと異なる結果が。チャンプとか、マキロイとか、英樹のほうが、デシャンボーより悪いですね。
ま、まあいいです。人には向き不向きがあるということにしておきましょう。それに、2020シーズンは試合数も少なかったですし。。。
とここで少々脱線しますが、デシャンボー式スイングが向いている人とはどういう人か、考えてみました。
それは ”引っ掛けが多発してしまう人”、このような方はデシャンボーのようにボールと体の距離を大きくとってアドレスするといいかもしれません。
「ジャイロ効果」というものをご存じでしょうか?
ジャイロ効果とは、体幹の回転軸と腕振り軸の傾き差が大きいほど、インパクトに向けて右手が回内しやすくなる現象のこと。ゴルフに限らず、野球のピッチングなどでも、このジャイロ効果の存在は確認されています。

例えば、ボールの近くに立ってアドレスする人。
このような方は、インパクトに向けて腕が縦気味に振られることになりますので、上半身の回転軸と腕振り軸との傾き差が大きくなり、右手の回内運動が強くなりがちです。それが、引っかけ球を誘発してしまっているのかもしれません。
対して、ボールの遠くに立ってアドレスする人。
つまり、デシャンボーのようにアドレスする人のことですが、このような方は、体幹の回転軸と腕振り軸が平行に近くなるので右手の回内運動が抑えられる傾向にあります。
ですので、なんや知らんけど今日はひっかけ球が出てしまうなーという状況においては、ボールから遠くに立ってアドレスすればいいかもしれませんし、逆に、スライスが頻発してしまう状況では、ボールの近くにつようにすれば、スイングを変えずに球筋を調整できるというわけです。(上手くいけばですが)
話を戻しましょう。
と、とにかく、ここで私が言いたかったことは、オーソドックスに腕とシャフトに角度をつけたスイングで、あえてヘッドの操作性を落としてスイングするほうが自然であり、ミスも少なくなるのではないか、ということです。
今現在、デシャンボー式がいいのか、オーソドックス式が良いのか、判断難しいところですが、2021年シーズンの結果を待てば見えて来るでしょう。
私はオーソドックス派ですから、チャンプとか、マキロイとか、英樹とかにもっとがんばってほしいと願っています。
デシャンボー式は、オーソドックスなスイングより筋力を必要とする?!
ゴルフスイングには3つのトルクが作用していると言われます。
一つ目は体幹主導のαトルク、二つ目が腕の旋回運動に伴うβトルク、そして三つ目がシャフト軸周りに発生するγトルクです。

デシャンボー式では、腕とシャフト間に角度がついていません。ということは理屈上、βトルクが大幅に削られるものと考えられます。
また、ボールと体の距離が遠くなるということは、オーソドックススタイルより慣性モーメントが大きくなりますから(慣性モーメントは距離の自乗に比例して大きくなる)、ヘッドが重たく感じ、振りにくいと感じてしまうことでしょう。
つまり、デシャンボー式では先述したように、ボールとの距離が遠くなる(回転半径が大きくなる)ことによるヘッドスピードの上昇というメリットが考えられる反面、慣性モーメントの増大、さらに飛ばしの主体となるトルクがほぼαトルクのみとなってしまうというデメリットも考えられるわけです。
そこで、デシャンボーはこう考えました(多分)。
それなら、バッキバキのマッチョボディーを手に入れようではないかと。
それが今の彼のボディー。
メリット・デメリット双方を考慮すれば、デシャンボーの飛ばしの秘訣は彼のスイング方式にあるのではなく、むしろ筋力がアップしたことにあるのだと考えています。(これまでは、技術に筋力が足りていなかったという意味です)
筋力からの考察
先項で、結局のところ筋力向上が飛ばしに最も貢献しているはずだと結論付けたわけですが、ここで興味深い動画を一つご紹介させてください。
下記動画の0:48で、2016年のスイングと2020年のものが比較されていますが、明らかに2020年のスイングアークのほうが大きくなっています。
これこそまさに、身体を鍛え上げた成果。
ここまで鍛え上げたからこそ、より大きな回転半径でのスイングが可能になった。そして、先述したデメリットも筋力向上によって完全に克服されたわけです。
飛距離が欲しければ体を鍛える!これもう常識。
ウェイトトレーニングをやっても意味がないだとか、ウェイトでつけた筋肉は使えないとか言われますが、そんなことはありません。
こんな不毛な議論が起こってしまう要因は、プレーヤーがせっかくつけた筋肉を単に使いこなせていないこと、そしてさらに、筋力アップした体に技術のほうが追いついていないことにあると思われます。
デシャンボーもトレーニングしてスイングを変えました。筋力アップと技術のチューニングはセットでなければ、結果には繋がらないのです。
最後に
2021年最初の記事がデシャンボー。彼を見習って、多くのゴルファーが筋トレに興味を持つことを望んでいます。
私も今年は筋トレがんばろうかなと。特に脚トレをがんばろうかなと。
2021年は貯筋の年にしようかと思います。
本年もどうぞ “Golf i Station” をよろしくお願い申し上げます。