昨今、何かと話題のシャローイングですが、その一番のメリットは「スピン量の低減」にあると思います。
これにより飛距離アップに期待ができるわけですが、しかしながら、シャローイングの効果はこれだけではありません。
スイングにキレを生み出す効果もあるのです。
ここでいう「キレ」とは、スパッと振り抜かれるヘッドの走り。これは、シャローイングを行うことで自動的に引き起こされるジャイロ効果のおかげです。
地球ゴマが倒れそうで倒れないのはジャイロ効果のおかげ、良いピッチャーの投げる球にキレがあるのもジャイロ効果のおかげ、そしてスパンと振り向かれるクラブヘッドもジャイロ効果のおかげなのです。
ジャイロ効果とは?
「ジャイロ効果」は、回転する物体において発現します。身近な例では、地球ゴマ。
地球ゴマが斜めになりながらも倒れることなく回っていられるのは、ジャイロ効果のおかげです。
自転している物体の回転軸が円を描くように振れる現象(0:35~0:44くらいがわかりやすい)を歳差運動といいますが、この運動が成立するのもジャイロ効果のおかげであり、ジャイロ効果には、自転する物体の姿勢を安定に保とうとする性質があるのです。
ただ、具体的にその性質を説明するのは複雑で難しい。
そこで、デジタル3Dモデルを使ってわかりやすく説明されている動画を発見しましたので、ご興味ある方はご確認いただければと思います。
ピッチャーはジャイロ効果を利用してキレ球を投げている
ジャイロ効果のゴルフへの適用を考える前に、野球のピッチングにおけるジャイロ効果の役割について考えることにしましょう。
スポーツ科学の世界において、いわゆる「球のキレがよい」と言われるピッチャーは、往々にしてジャイロ効果をうまく使えているピッチャーだと言われているようです。
野球のピッチャーが球を投げる時に用いられるトルクは、基本的に「体幹軸のトルク」と「肩の(水平屈曲による)トルク」、そして「肘の(伸展による)トルク」の3つだと考えられており、下図における3つの直線矢印が、その各軸を表しています。
(図1: 「トップアスリートの動きは何が違うのか」山田憲政 著 より引用)
上図のように、これら3つのトルクは、背骨軸に直行した平面上で作用すると考えるのが一般的です。
たとえ、アンダースローであったとしても、平面の傾きが変わるだけで、同一平面状となることに変わりはありません。
(図2: 「<知的>スポーツのすすめ」深代千之 著 より引用)
ただし、球をリリースし終えるまで、ずっと同一平面状にあるわけではなく、実際の投球動作には肩の内転が入りますので、その分平面の傾きが緩やかになるのです。
(図3: 「トップアスリートの動きは何が違うのか」山田憲政 著 より引用)
ここで押さえておきたいのが、”体幹軸に直交する平面”と”リリース平面”との傾きの差が、ジャイロ効果がを生み出していることです。
結果的に、このジャイロ効果は、投手の腕を内旋させ、手を回内させるように働くことがわかっており、これがいわゆる「球のキレ」に関係すると言われています。(図3右側)
たまに、ストレートを投げたつもりでも、ナチュラルにシュートしてしまう人がいますが、これはおそらく、平面の傾きの差が大きく、意識しなくともジャイロ効果による腕の内旋・手の回内運動が強く入ってしまうからなのでしょう。
尚、このジャイロ効果によって発生するトルクは、運動依存型のトルク。言い換えれば、自然発生的なトルクですから、筋力は必要とされません。
ゴルフスイングにおけるジャイロ効果
それではここから、ゴルフスイングにおけるジャイロ効果の考察に入ります。
シャローイングとは、浅い侵入角度でヘッドを振り抜いていくことですが、そのためにはまず、切り返しから手元を低い位置へポジショニングする必要があります。
この低い位置へのポジションを実現するのが肩の内転運動(図3左側の絵を参照)。切り返しから脇を閉じる時に使う動作です。
このようにすれば、体幹軸に直交する平面とクラブが推移する平面との間に角度差が生じるはずで、すなわち、ジャイロ効果が発揮される条件が満たされたことになります。
ジャイロ効果の条件が整えば、あとは腕の旋回ならびに手の回内運動が自然に誘発されますから、クラブをスパッと振り抜くようなキレのあるスイングが手に入るというわけです。
ここでもう一点。
ジャイロ効果によって、手の回内運動が誘発されるわけですから、シャローイングをマスターした暁には、フェースを返す意識など全くもって不要となるはずです。
プロや上級者の言う「フェースを返す意識は全くない」という言葉は、決して嘘ではありません。
たとえ、スライスにお悩みでも、フェースを返す練習をするのではなく、これからは、シャローイングを練習するようにしましょう。
尚、シャローイングにトライはしたけど結局上手くいかなかったという方は、シャフト軸周りにヘッドを回転させる”ローリング”を試してみると良いでしょう。

まとめ
結局のところ、ゴルフスイングの正解はシャローイングにあるような気がしています。
シャローイングが正しくできれば、ジャイロ効果によって勝手にヘッドは返るし、走ります。
手を返す意識など、全くもって不要なわけです。
もちろん、それが必要な方もいらっしゃるかもしれませんが、多くの人にとってはマイナスに働くはず。
「最近スイングにキレがないなあ」と感じる方は、なにはともあれシャローイングにトライされることをお勧めします。
面白練習器具
最後に面白い練習器具を紹介します。
野球の練習器具になりますが、その名も「ジャイロスティック」。正しく腕を振れた時、「ピュッ」と鋭い音がなるそうですが、反対に、うまく腕を振ることができなければ「ひゅ~」と間抜けな音がでるらしい。
もし、ゴルフにもこのような練習器具があったとしたら使ってみたいですね。