本の概要
日本ゴルフ界のレジェンド青木功氏が、自身のゴルフ人生を語る自叙伝。
2003年から2004年にかけて週刊新潮で連載された「おれのゴルフ」をまとめたものらしいから、今(2020年)から16-17年前に書かれたことになる。
海外挑戦の先駆者として、七転八倒奮闘したエピソードには敬意を抱かずにはいられないだろう。
この本で用いられている一人称は「おれ」。
はじめは面食らうかもしれないが、読み進めるうちに、なるほど「おれ」という表現でなければ、この世界観を作り出すことは困難であっただろうと納得してしまうから不思議である。
兎にも角にも、青木氏の生の活躍を知る人にとっては、楽しめる本であることは間違いない。
読後の所感
青木功氏の全盛期の活躍と実績は知っているが、プレー自体ほとんど見た記憶はない。
しかし、あのときの決定的な出来事だけは鮮明に覚えている。
朝から、いやいやながらも学校へ行こうと居間のテレビの前を通りかかったとき、左サイドのラフから放たれた一打が、ワンバウンドでホールに吸い込まれたのが見えた。
そう、それは、1983年ハワイアンオープンで青木プロが逆転優勝を遂げた瞬間だった。
当時の私は野球少年。当然ゴルフなんかに興味はない。
テレビの前で興奮するオヤジに「そんな大したことなの?」と冷ややかな視線を送った記憶がある。
しかし、今思えば「大した」ことだった。
米PGAツアーで日本人が初めて優勝した瞬間だったのだ。しかも、逆転のイーグルショットというおまけ付きで。
もちろん、このハワイアンオープンのエピソードは、本書で紹介されている。
あのとき、青木プロはキャディーから9番アイアンを勧められたらしいが、最終的には自分の判断に従い、ピッチングウェッジでのショットを選択したとある。
結果は前述の通り、逆転のイーグルショットとなった。まさに研ぎ澄まされたプロのカンが働いた瞬間だったと言ってよいだろう。
実は、このエピソードについての後日談が、本書で語られている。
なんでも、次の日同じ場所からウェッジでのショットを試してみたが、何回やっても8番アイアンでなければピンまで届かなかったと言う。
翌日、距離を歩測したあと、同じ場所からウェッジで何度も打ってみた。全部バンカーに入った。9番で打ってもピンまでは届かない。8番でようやく、ピンハイだった。
火事場のバカぢからじゃないけど、なにがなんでも「寄せて、ワンパット」の気合で打った昨日の実戦と、試しに打った翌日では、集中力に雲泥の差があったのである。
きのうのカンは生きたカンだった。それも、きのうのあの場だけで働いたカンだったから、試し打ちでは働きようがなかったのだ。
(ゴルフ青木流:P54より引用)
この他にも、ゴルフ愛溢れるエピソードが満載の本であった。
青木氏の現役時代を知る人も知らない人も、読んでおいて損はない。
最後に
いやはや、実に楽しく読むことができた。
ゴルフ好きなら、読んでおいたほうがいい。
尚、たった今ググって知ったけど、JGTOの会長・理事選任で色々あったらしいね。この辺はノーコメントで。
★★★ GiS的一度は読んでおきたいゴルフ本認定作品 ★★★
