新コーナー「ゴルフメカ談議」オープン!

謎の一般ゴルフ研究家(通称パンゴル)が、ゴルフメカニクス/メカニズムについて会話形式でお送りする、ゴルフエンターテイメントです。

ゴルフメカ談議へGO!

【GiS的多読】ザ・リアル・スイング 最適スイング習得編:奥嶋 誠昭

多読!ゴルフ本
世に無数に存在するゴルフ解説本を読み、独自の感想・見解を述べるページ。正直言って、現在出回っているゴルフ本のほとんどが、かねてより言い伝えられてきたことの焼き直しだろう。だが、一行でも、一言でも良いから、役に立つ情報を見つけたい。発見と気付きのための多読である。

本の概要

本書は、「科学が解明したゴルフ新常識 ザ・リアル・スイング」の続編であり、副題からもわかるよう、最適スイングの習得方法が述べられている。

<前作関連記事>

【GiS的多読】科学が解明した「ゴルフ新常識」 ザ・リアル・スイング:奥嶋 誠昭
GEARS(ギアーズ)と呼ばれる最新装置を用いて、ゴルフスイングを6つの自由度(6DoF)で分析した結果がまとめられている。6DoFとは、3次元直交座標系のXYZ各軸における、3つの並進と3つの回転のこと。ぱっと見、難しそうに感じるが、バイオメカニクスや物理の知識が全くない方でも十分に理解できる内容に仕上がっている。主観ではなく、客観的にゴルフスイングを評価したい人にお勧めの本。

 

各人のゴルフスイングを4つのパターンに分類し、そして1つのスイングを10個のポジション分割して説明していく手法がとられている。

コンセプトは、「基本的にスイングは自由でいいが、傾向に合わせた動きを採用しないと、結局は破綻するよ」といったもの。

色々なスイング理論をただただ取り入れてごちゃまぜにしてしまうと、成り立つものも成り立たなくなってしまう。

まずは、「自分のスイング傾向を把握し、そこから各傾向にマッチするつじつま合わせをしていきましょう」といった内容だ。

読後の感想

スイングはひとそれぞれだから、自分のスイング傾向に合わさせたつじつま合わせをすることが肝要。

ここまではわかるが、いくらひとそれぞれ、自由にスイングしていいとは言っても、自由のやり過ぎも問題ではないだろうか。

まずは、本書に載っていた、以下のコラムを読んで欲しい。

 

<コラム01:右回りも左回りも上げ方次第>

最近のはやり言葉としては、「右回りのループ」がありますね。(注:切り返しにおけるヘッドループの方向を意味する)

自分から見て、ヘッドを時計回りに回し、上がってきた軌道よりも低いラインで下ろしていきます。

上げてきたプレーンをなぞるように「同じところを下ろす」スイングもありますが、プロのデータを見ると、ループしているケースがほとんどです。

よく「右回り」と言いますが、上げ方次第で「左回り」もあり得ます。右にしなきゃいけないというわけではないのです。

バックスイングで強烈なインサイドの軌道で上げてきている場合、そこからさらに右回りにしようとしても、無理な話です。

たとえば、アドレスのときのシャフトの傾きに沿ったバックスイングならそうなります。

すると外から、つまり「左回り」して下ろすしかない。それでも安定して下ろせるなら、それでいいのです。

 

「それをいっちゃあ、おしまいよ」(寅さん風)

いくら自由に、自分にとって最適なスイングを目指せば良いとは言え、左回りはまずいでしょ。

プロが、アウトサイドイン軌道でフェードを狙う時も、切り返しでクラブは右回りしているはずで、左回りはありえない。

理由は明確で、左回りじゃクラブを振れないから。

インサイドにクラブを上げて左回りに下ろしたら、餅つきにしかならない。

バックスイングで、ヘッドにはそれなりの慣性が働くんだから、左回りに下ろしてしまえば、そのままの勢いで、地面に突き刺さるしかないってことがわかる。

スポンサーリンク

 

インサイドにテイクバックするプロと言えば小田孔明プロ。

バックスイングのヘッド軌道よりも、ダウンスイングのヘッド軌道の方が上を通るように見えるため、一見左回りのように見えるが、インサイドに上げたクラブがトップで天を指したあとのダウンスイングは、右回りとなっているはずだ。

つまり、切り返しのヘッドの位置を基準として見れば、アマチュアでスライスに悩んでいる方も含め、皆右回りだってこと。

 

ある理論の正当性を示すために、パラメータをものすごく大袈裟に振って検証する手法があるが、ヘッドループとは右回りが正しいのか、左回りが正しいのか、その真実を知るには、ものすごーく大袈裟に右回りさせたときと、ものすごーく大袈裟に左回りさせたときの結果を比較してみれば良い。

少なくとも自分の場合、大袈裟な右回りであればクラブを振ることはできるが、左回りでは地面にクラブを突き刺すことしかできない。

このことを踏まえて考えても、やっぱり「左回りでも安定して下ろせるのならそれでいい」という解釈には疑問を抱かざるを得ないのである。

 

本書では、スイングの基本4パターンに合わせたコツや意識が紹介されていくのだが、自由を許容し過ぎているため、かえって収集がつかなくなってしまう事態に陥ることが想定される。

ある程度、自分の理想のスイング像を思い描いてから読まないと、とんでもない方向に進んでしまうことになるだろう。

スポンサーリンク

最後に

GEARSというモーションキャプチャツールが、個人のクセを掴むため、傾向を把握するためにしか活用できていないのではないか。

効率的にパワーを発揮できるスイングを探究するために、このツールを活用すれば、合理的かつ論理的に正しいスイング理論を導き出すことができると思うのだけど。

 

冒頭の「本の概要」で述べた通り、本書のコンセプトは「基本的にスイングは自由でいいが、傾向に合わせた動きを採用しないと、結局は破綻するよ」である。

だから、「単なる理論の寄せ集めではなく、自分のパターン(傾向)に合わせたつじつま合わせをしていきましょう」となるのだが、スイングの基本原理を壊してまでの自由を許容してしまえば、泥沼にはまるだけだ。

 

筆者のプロフィールを見ると、ドクタークォン・バイオメカニクスレベル1と書いてある。

レベル1がどの程度なのか定かではないが、バイオメカニクスの知識を有しているのであれば、ある程度正しいと思われる効率的な動作とNG動作も示すことができるはず。

もし、奥嶋氏が今後も本を出版するのであれば、今回のような八方美人的本ではなく、自身のバイオメカニクス的見地をふんだんに取り入れた、自理論のゴリ押し本であってほしいと願っている。

 

尚、奥嶋氏は「側屈」推しだ。

本書の冒頭で、「この本一冊かけて「側屈」について説明していく」と書いてあったが、最後まで読んでもようわからんままだったなあ。

このことも踏まえて、この本を読んだ人の感想を代弁させてもらうと、「だから結局どうしたらいいの?」ってことになるんじゃないだろうか。