本の概要
著者のゴルフスイングに対する気づきやひらめきが、物理用語を用いて解説されている。
「物理的」とあるが、そんなに難しい内容ではない。
遠心力とテコの原理、慣性、重心など、学校で習った基礎的用語と概念さえわかっていれば十分である。
ゴルフスイングに対する著者の主張を、以下に示しておこう。(巻頭カラーページの見出しより抜粋)
- クラブという道具の「機能のさせ方」がわかればゴルフはやさしくなる!
- ヘッドが水平面で円運動すればフェース面は目標を向いてくれる
- 腕とクラブが一直線となる「最長点」で慣性による加速と遠心力が最大となる
- 手の軌道よりヘッドが高いトップからはヘッドが水平面上で円を描けない
- 手の軌道よりヘッドを低くしておけばヘッドが自然にカラダの前で円を描き出す
- 「レイドオフ」のトップをつくるためには反時計回りでヘッドを上げていく
- 遠心力で上に浮き上がろうとするヘッドを押さえつけながらインパクトゾーンを通過させる
- 水平面上の遠心力という前提条件によりスラストアップとサムダウンが起こる
- 水平面上の円軌道、水平面上の遠心力を利用するため、ヘッド軌道のイメージは限りなく水平面に近くなる
読後の所感
そもそも、ゴルフスイングを円錐振り子で表現してしまうのはいささか乱暴ではないかと。
斜めのスイングプレーンから、水平成分を取り出すというのならまだわかるけど。
前項の箇条書きを見るとわかると思うけど、「水平面上」という言葉が何度も使われているよね。
この水平面上とは、円錐振り子の底面のことなんだけど、クラブヘッドはこの円錐の底面である水平面上を移動するという発想が、スイング解説のベースとなっている。
よく、物理の問題を考える時、力を水平と鉛直方向に分解して考えるけど、円錐振り子に模して考えるとは斬新過ぎではないだろうか。
本書では、「遠心力はヘッドを上に浮き上がらせようとする力である」としているが、そりゃー円錐振り子で考えたらそうなるよね。
でも、実際のヘッドの軌道は斜めで、肩もしくは手元を支点とした平面なわけ。
だから自分は、遠心力による作用は、その平面上で、ヘッド、シャフト、前腕・上腕が一直線に整列させるように働くと考えるわけだ。
ハンマー投げを想像してほしい。あれも斜めに傾いた平面状での運動だ。
選手の腕とケーブルとハンマーの位置関係はどうなってる?ほぼ一直線であると言っていいよね。
だから自分は、「遠心力はヘッドを上に浮き上がらせようとする力」ではなく、「質量を持った物体を一直線に整列させようとする性質を持った力」と表現したほうが良いと思うんだけど。
ここで、前項の「8」を見て欲しい。
「水平面上の遠心力という前提条件によりスラストアップとサムダウンが起こる」とある。
スラストアップは置いておいて、サムダウンに注目して考えてみよう。
※ サムダウンとは、左手の親指が地面を指すこと。
円錐振り子を基準にして考えているから、ヘッドは浮き上がるものだという前提になっている。
だから、サムダウンしてヘッドのネックを押し下げるように力を加えるべきと見て取れる説明があるんだけど、サムダウンしたらダフッて終わりだよね。
自分の中ではサムダウンは悪い動きだと思うけど、皆さんはどう考えているのだろうか。
ベン・ホーガンの時代から、切り返しでクラブは寝て入ってくるものであることを、「すべてのスイングはベン・ホーガンに通じる」という本を読んで学んだばかり。
ダウンスイングでシャフトプレーンに乗せるためにはクラブを寝せないと乗りようがない。
だから、低い位置からアタックするシャローイングが推奨させれていると思うんだけど、ここでサムダウンなんかしちゃったら、ボールの手前叩くか、体が伸びあがるかの二択になっちゃうと思うよ。
うーん、円錐振り子で例えてしまったのが、そもそも間違いに思えてしょうがない。
他にもツッコミどころ満載だったけど、今日はこれくらいにしておくね。
発見!役立ちポイント
自分はそもそもテコの原理なんて意識して使うものではないという考え方なんだけど、その点では小澤氏と意見が一致したと思う。
発見!ではないけど、確認できたという意味で。
私のテコの原理に対する考えて方はこちらの記事をどうぞ。

最後に
2年ほど前から、小澤氏のことはYoutubeで知っていた。
そして、本書が発売された2018年、実は本屋でパラパラと立ち読みしたことがある。
そのときは、「円錐振り子の例えがよくわからなかった」ので、ほんの数分で本棚に返したのだが、2020年の現在、あらためて読んでみてもやっぱりわからない。
とはいえ、物理的な視点でゴルフスイングを解説していく姿勢は好き。次回作に期待したい。